映画「レイルウェイ 運命の旅路」ネタバレ - 鉄道を愛し、鉄道に人生を支配された男

戦争で深手を負ったエリックが何十年もの時を経て、自らへ下された拷問、戦犯に向き合い受け入れるまでのストーリー。復讐と赦すことについて考えさせられる。
 
レイルウェイ 運命の旅路(2013)

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監督:ジョナサン・テプリツキー
出演:コリン・ファース/ニコール・キッドマン/真田広之 他
 
★★★☆☆(3.6)
 

あらすじ

 
鉄道愛好家のエリックは、退役軍人クラブのメンバーとの会合である日いまの妻パトリシアと列車で出会い、短い間の会話のうちに恋をして結ばれた話をする。今でも幸せに暮らすエリックだったが、パトリシアにも打ち明けられない第二次世界大戦下の頃の呪縛に囚われていた。その様に気づくが本人からは何も話してもらえないパトリシアは彼の軍友フィンレイに第二次世界大戦当時の話を聞かされる…
 
 

ストーリーとネタバレ

 
今を生きながらも、過去の記憶に苛まれる日々を送っていたエリック。妻のパトリックにも辛い経験を話すことはできずにいると、パトリシアは過去にあったことについてエリックの軍友フィンレイから聞かされることになる。
 
第二次世界大戦下、エリックたちは日本兵の捕虜となり技術兵としてタイで働かされ、また別の者は日本のタイ~ビルマ間の鉄道開設のために重労働を強いられていた。エリックは寄せ集めた道具を使い密かにラジオを作り、情勢が逆転したことを知り希望を心に灯す。
しかしそんな矢先にラジオや描いた地図を見つけられ、暴行を加えられる仲間を見かねたエリックは自ら名乗り出て、ひとしきり暴行をされたあとは死刑を告げられ連れ去られ、2週間戻らなかったという過去があった。
 
そしてあくる日フィンレイが1つの新聞記事を持ってくる。そこにはかつてエリックを拷問した際に通訳をしていた永瀬が生きており、当時拷問のあったタイの同じ地で巡業をしているというものだった。「エリックには積年の思いを晴らす権利がある」と話すが、「もう時が経ちすぎた。私はもう軍人ではないし、今は妻もいる。1年前だったら復讐しただろう」との想いを打ち明けるが、永瀬に会いに行くことを決意する。
 
憲兵隊戦争博物館を訪ねたエリックは、永瀬と話をしていく中で自らの正体を明かし、自分がされたように同じ拷問を受けさせようと試みるが、いざ行動に移すことは出来ず、彼を独房に入れ、拷問部屋を目の前にして魔の2週間の記憶がフラッシュバックする。彼は軍事裁判の際に自らは拷問等には関わっておらず、ただの通訳であったと答えたために戦犯にならずに生き残っていたのだった。
「戦時中は降伏するなら生き残るより名誉の死を選ぶとも話したが今まで生きてきた。私は今日のためにきっと生き続けてきたのだ。終わらせてくれ」という永瀬に、憎しみも憤りも消えたわけではないが、この憎しみの連鎖は止めなければならない、と赦すことを選んだエリックと永瀬はその後命が尽きるまでよき友であり続けた。
 
 

感想とか文句とか

 
「復讐という名の負の連鎖を断ち切ること」について、いろいろな見方や難しさがあるけれど、これは戦時のことが対象となっているため、ある種の責めるに責めきれない面もあると思う。それでも「我々は~~した」「兼兵隊は~~行いをした」ではなく「私がした」と認めろ、という過去を認めさせて受け入れさせないと自らが潰えてしまう感覚を想像するのは容易くない。
拷問シーンも結構しっかり描かれる(腕を折り、水攻めをし、暴言も暴力も満載)
日本人が奴隷をとった時代を描いているので、なかなかまっすぐ観られないという人もいそうだけれど、むしろ日本人こそ観る映画だとも。戦争する以上、一概にどちらだけが悪いとは言えないし1つの映画で両者を対等に観るというのは難しいのもそう。だからこそ、いくつか観る必要があるし物事はいろんな側面から捉える必要がある。
 
鉄道を愛したがために、それをきっかけに描いた地図で一生残る拷問を受け、鉄道開設の捕虜を思い出し、妻と出会った鉄道を思い出す。フィンレイの言う通り「彼の全人生は"鉄道"」である。それが良いのか悪いのかは、エリックが今でも鉄道の時刻表を持ち歩き、鉄同と向き合っていることが表しているのではないか。
 
コリンの過去を抱えながらも向き合い、それを噛みくだいて先に進もうとこれ以上繰り返すことをやめ、手を取るシーンは圧巻。ニコールの抑えた妻の演技もとてもよかったなぁ。
やはり平和に静かに暮らせている今だからこそ、考えなければいけないこれからがある。心から赦す勇気に胸を打たれる。戦いの中に身を置く戦争映画もいいが、こういう側面から戦争を観るということも大事だし忘れたくはない。