映画「ウィンストン・チャーチル」ネタバレ感想 - ダンケルクを裏で守った嫌われ首相

本年のアカデミー賞 主演男優賞/メイク・ヘアスタイリング賞を受賞されました!おめでとうございます!!!
 
 
ウィンストン・チャーチル ~ヒトラーから世界を救った男~  (2018)
 

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監督:ジョー・ライト
出演:ゲイリー・オールドマン(ウィンストン・チャーチル)/ベン・メンデルソーン(イギリス王ジョージ6世)/クリスティン・スコット・トーマス(クレメンティーン・チャーチル)/ロナルド・ピックアップ(ネヴィル・チェンバレン)/スティーヴン・ディレイン(ハリファックス伯爵外務大臣) 他
 
おすすめ度
★★★★★★★★★☆
・史実、世界史が好き!
・噂のメイク技術を見たい!
・ダイナモ作戦、ダンケルクの裏側をもっと知りたい
こんな方には特におすすめです⸜(* ॑▿ ॑* )⸝
 

あらすじと見どころ

第二次世界大戦期の1940年5月、ナチスヒトラー率いるドイツ軍がヨーロッパへの侵攻を深めていた。イギリスの海軍ではドイツ軍のノルウェー侵攻を防ぐことが出来ず、チェンバレン内閣が責任をとり退陣した。この危機を救うため、新首相に選ばれたのは「誰よりも型破り」「一日中酒ばかり飲んでいる」「口ばかり達者」「失策続き」だと揶揄されていたチャーチルであった。何よりも屈すること、諦めることを拒否し続けたチャーチルのとった作戦とは──
 
英国を代表する偉大な人物として今なお人気の高いチャーチルが、第二次世界大戦下の厳しい時期に首相となった1ヶ月間の事実。
昨年9月に公開された「ダンケルク」における、ダイナモ作戦の指揮を執ったのがチャーチルです。噂通り、ダンケルクを観ているor時代背景を掴めていると2倍楽しめるのは間違いないです!!まさに「ダンケルク」の裏側を観ているようで入り込めたので、これから観に行く人orダンケルク未見で鑑賞した人はぜひ!ダンケルクをレンタルしてから行きましょう⸜(* ॑▿ ॑* )⸝
 
一応ダンケルクについてはこちら置いておきます|ω' )っ スッ
 

 

www.bmxrip.com

 

ネタバレとストーリー

1940年5月9日、ヒトラー率いるドイツ軍はベルギーまで侵攻を進めていた。イギリスはその前のノルウェー侵攻をも防ぐことが出来なかったため、首相であるチェンバレンは糾弾され、辞職を余儀なくされていた。後任はハリファックスだと誰もが思ったが、選ばれたのは野党にも顔が利くチャーチルだった。
 
チャーチルはガリポリでの戦いなど、しばし失策が続いていたことから、大臣たちや国王からも恐れられえている存在でもあった。レイトンを秘書兼専属タイピストとして迎えたチャーチルは、街往く人を眺めながら「私はバスに乗ったこともパン屋に並んだこともない。地下鉄には乗ったことがあるけど迷ってしまったな」と話す。
 
国王への謁見も済ませたチャーチルは敵ともなる大臣を含めた5名を組閣した。声明には“ 平和 ”や“ 交渉 ”といった言葉は含まれず、「陸海空で徹底的に戦う」と表明したことから、大臣たちの反感を買うこととなる。兵士や軍需品の無駄遣いになるとの忠告にも耳を貸さず、危機に瀕しているフランスを救うため戦い続けることだけを主張したのだ。
 
5月25日ダンケルクとカレーに兵士たちが追い詰められたことを知る。カレーには4000人の兵士、ダンケルクには40万の兵士が残されており、攻め落とされるのも時間の問題であった。
(ダンケルクでこの時間を設けられたのは、陸から攻め続けたドイツが追い詰めた連合軍を一掃するために、空軍の攻撃に一手を賭けようとしていたため)
 
そこでチャーチルは、今後のため兵士を確保するべく、ダンケルクの40万人を救うためにカレーを囮として犠牲にすると呈した。ハリファックスには兵士の無駄死には許されないと、イタリアとの和平交渉を進言されるが断固拒否するチャーチル。
裏ではアメリカのフランクリンに連絡を取り、どうにか船艦の援助をと願い出るが断られてしまう。そこで民間の小型船をあるだけ徴用して救出に向かう「ダイナモ作戦」をラムゼー提督に提言した。
 
内閣では未だイタリアとの交渉に応じるべきとハリファックスに進言されるが、いつまで独裁者に従う歴史を繰り返すのだと跳ね返す。
 
5月27日遂にベルギーが陥落、平和条約が必要だと言うチェンバレンはガンを患っていた。辞任をチラつかされたチャーチルは、好条件であるならイタリア(ムッソリーニ)との交渉の余地があるとの妥協案を示す。
戦い抜くことに迷い始めたところに、国王から「君のことを一番恐れたのはヒトラーかもしれない。私は今後何があっても君を支持する。逃げない。ただ助言がある、町で人の声を聞くのだ。真実を国民に伝えるんだ」との言葉を受ける。
 
5月28日、860隻の民間船が集まり、遂にダイナモ作戦が決行された。チャーチルはその日、町へ出て密かに地下鉄に乗り込む。首相がいることに驚く市民たちに、挨拶をしてチャーチルはあることを問いかける。
『 もしイギリスが好条件から交渉をしてヒトラーに屈するのは?』「Never!」「絶対にダメだ」「降参なんてしない」『 ドイツ軍が街に現れても?』「最後まで戦う」「ほうきででも抵抗する!」
市民の生の声を聞いたチャーチルは閣外演説を行い、大臣たちも同じ気持ちであることを確信する。
国会演説でその方針を力強く提唱したチャーチルに、与野党は賛同を見せ、最後まで郷土を守り抜くことを誓った。
 
ダンケルクでのダイナモ作戦は成功を収め、1割でも救出出来たら奇跡と言われた作戦は30万人の兵士の送還することが出来た。その5年後にようやく連合国は勝利を手にしたのだった。
 

丁寧に描かれたチャーチルの人

2002年にBBCが行った「最も偉大な英国人100人」の世論調査では1位を獲得するほどの支持を持ったチャーチル。しかし劇中でも描かれているように、味方ばかりが多い立場でも性格でもなかった。
時に横柄であり、短気であり、舌っ足らずな面もあり。それでも細かなところまで周りに目を配り、周囲に愛を持って接していたことも丁寧に描かれていて。
 
仕事優先の生活下でも、妻や家族のフォローや猫や犬に対する優しさにも事欠かない。頑固な面もあれば、大事な局面では内閣大臣の主張も尊重する。タイピストで秘書のレイトンの、事実の端々だけ知る方が辛いという言葉には、現状と現実をまっすぐ伝える。助言ひとつとっても向き合い、時に市民、時に閣外大臣の声にも耳を傾け、その上で信念を全うする。
地下鉄で市民と話をするシーンでは、何人もの人と目を合わせ、握手をして、意見を聞くところではきちんと名前を覚えていて。そこで出会った人の名前もきちんと書き留めていて。こんなにも平等に耳を傾けられるトップは多くないと思う。
 
しかしいいところだけを描いているのではないし、どこか冷徹に判断をくださねばならなかったこともきちんと描かれている。勝つため、諦めないために流さずに済んだ血もあれば、カレーへの「救出されることはない」という電報もそうだ。
 
最初は頑固爺さんかと思いきや(笑)、そうではないことを節々で伝えてくれるので憎みきれなさもある。ユーモアも所々に挟んでくれるのでとても観やすい。だからこそラストに向けての展開には一層胸を熱くさせられた。
 

ゲイリーの快演と辻さんのメイク技術

アカデミー賞のメイク・ヘアスタイリング賞を受賞したゲイリーの変貌ぶりも今作の見どころの1つ。
ちなみに「バッドマン」のときのゲイリーはこんな感じ。
 

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辻さんの特殊メイクについては、この受賞からテレビでも幾度と特集されているので知っている人も多いのでは。
 
▼ゲイリーと特殊メイクアップアーティストの辻一弘さん

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本当にこういう小太りのまんまるなお爺さんにしか見えないし、人外であるとか、雰囲気丸々変わるヒーローでもなくこれだけ違うのに不自然じゃないってすごい。
また辻さんは一度映画界を引退されていて、今回はゲイリー直々のオファーがあり、「あなたに(メイクを)やってもらえるのならば私はこの作品に出る」とまで言ったそう。辻さんはハリウッド俳優や、特にゲイリーは特殊メイクの大事さをよく分かっていてくれるからこそ引き受けたといいますし。(日本人は...という旨の話をどこかの番組でしていたとかなんとか)そしてこれだけのリアルさを出すために、辻さんは半年をかけてこのメイクについて研究を重ね、ゲイリーは毎日3時間半のヘアメイク+着替えの時間を要したそう。それだけの努力の結果でこのクオリティを得ているなんて、細部にまで注目して観たいところです!
 

力強い言葉と信念だけは失わなかった男

チャーチルは数々の名言を残したと言われ、よく名言集としても取り上げられているのを見ます。それは劇中でも同じことで、その言葉の力強さに勇気をもらった人もたくさんいたはず。印象的で好きなセリフの一部です。
 
(チャーチルの妻が鼓舞するシーン)
「権力者には思いやりが必要、そして時に穏やかさも」
 
「私が捧げられるのは血と労苦、涙と汗だけだ!」
 
「(失敗したら)全責任は私が負う!!そのためにこの椅子に座っているんだ!!」
 
「勇敢に戦って破れた国はまた立ち上がることが出来る。でも逃げた国はそれが出来ない」
 
「遅かれ早かれ、死は訪れるもの。であれば強敵に抗うほど尊い死があるだろうか」
 
(方針を変えたけど気が変わったかい?に対して)
「気も変えられないやつが国を変えられるか!」
 
(ナチスに屈せず、誇りを持って最後まで戦うことが)
「国民の総意だ!私はその気持ちを代弁するためにいるのだ!」
「諦めない、何年かかっても、例え自国だけになっても!死ぬまで郷土を守る、犠牲が生じたって!」
 
私は30日の夕方の回を観に行ったのですが(これ+梯子のために仕事を早く切り上げ笑)、お隣の席だったおじさまが後半くらいからすごく感動されていて(´;ω;`)更にグッとくるのを堪えられなかったところもあり。いつまでもそういう素敵な感性も持っていたいなと思いました。
 
 
 
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