映画「ゲティ家の身代金」ネタバレ感想 - お金持ちが皆羽振りが言い訳じゃない。

ミシェルウィリアムズが主演、ある俳優の降板により映画の内容以上に話題となったとも言える今作。(詳細は後半で)
世界一の大富豪で石油王だったジャン・ポール・ゲティの実話映画ですよ!
 
ゲティ家の身代金(2017)
 

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 監督:リドリー・スコット
出演:ミシェル・ウィリアムズ(ポールの母ゲイル)/マーク・ウォールバーグ(チェイス)/チャーリー・プラマー(ポール)/クリストファー・プラマー(富豪ゲティ)/ティモシー・ハットン(ゲティの秘書ヒンジ)/ロマン・デュリス(チンクアンタ) 他
 
おすすめ度
★★★★★★☆☆☆☆
・実話映画が好き
・やっぱりミシェルはこういう不穏な映画が似合う
・石油王と結婚したい人はこういう人もいるんだぞ(?)
こんな人はぜひ観てみてください(*˙ᵕ˙ *) R15なので注意!
 

あらすじと史実

世界一の大富豪ゲティを義父に持つゲイルは、旦那とは離婚をして、子供たちと裕福ではなくとも平和に暮らしていた。ある日息子のポールが誘拐され、1700万ドル(当時で約50億円)の身代金を要求される。義父のゲティが富豪であることにつけ込み、大金を奪おうとしていた。しかし世界一の大富豪である彼はそれと同じ程にケチでもあり「身代金なんて無駄金は払わない」という。ゲイルが戦うべき相手は誘拐犯か、大富豪の義父か──。
 
誘拐事件は実際に起こったことであり、例の衝撃シーンも実話だとか。ゲティは実際にはガンで亡くなったとのこと。映画内でもあるように、ゲティが収集していた美術品等はゲティ美術館、それを管理する財団へ受け渡され、それを巡り、遺族は泥沼の裁判沙汰にもなったそう...。やはりお金はこわいな...
 
ちなみに海外ではこんな衝撃的なポスターもあったそう。真髄をついたネタバレとも言える恐ろしいポスターだ......

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ストーリーとネタバレ

1973年ローマ。深夜の街を1人で過ごしていたポールは、ある男達に誘拐されてしまう。犯人たちの要求は1700万ドルという普通では考えられない金額。誘拐されたポールはただの青年ではなく、世界一の大富豪と呼ばれたゲティの孫だった。
 
ポールは母ゲイルと、ゲティの息子の父と兄弟たちがいた。祖父のゲティは富豪ではあるがケチでもあり、無駄だと思うことには金を払わず、値切ることも厭わない人物だった。
ゲティはポールの父を副社長として迎え入れるが、彼はプレッシャーから酒と麻薬に溺れ、家族を捨ててしまった。
財産分与やお金を受け取らない代わりに、自分が子供たちの親権を握ることを約束したゲイルの手で育てられたのだ。
 
ゲティは身代金要求を受けても、子供の誘拐にそんな大金は払えない。ここで払えば他の13人の孫だって危険に晒されかねないと言い、交渉人としてチェイスを呼びつける。
ゲティは「孫の中でもポールは特別愛している、出来るだけ早く、金をかけずにローマから連れ帰れ。女に人質交渉が出来るわけがないから母親も交渉には関わらせるな」という。
 
ポールを誘拐した犯人集団の1人、チンクアンタはポールとの会話の中で、富豪の孫も苦しみ生きていることを知る。彼は麻薬だけでなく、学校に火をつけたことで退学処分にもなっていた。会話の中でチンクアンタの素顔を目撃したことから、ポールの世話はチンクアンタが特に見るようになる。
 
捜査の中で、ポールが友人との間で狂言誘拐を計画していたことが判明し、警察とチェイス達は今回がそれだろうと捜査から身を引こうとする。ゲティもそれを聞き、この件は終わったこととしようとする。
そんな折に「ポールの遺体が見つかった」との情報で遺体確認に行くと、誘拐犯の内の1人の焼き尽くされた姿があった。これは狂言ではないと確信したチェイス達は、焼死遺体の身元から彼らのアジトを嗅ぎつける。しかし危険を察知したチンクアンタが既にポールを投資家マフィアに売ったあとであった。チンクアンタはポールの世話を頼まれ、彼に雇われる。
身代金の交渉は当初の半分以下である700万ドルまで引き下げたが、ゲティは首を縦には振らない。
 
ポールは誘拐犯たちの隙を見てボヤ騒ぎを起こし、逃走を図るが匿ってもらったはずの警察署で彼らに捕まってしまう。
連れ戻されたポールは、身代金を渋るゲティに対し、ポールの切り落とした耳と髪の毛、その写真を同封して脅しにかかる。
いよいよポールの命も時間がないとなったときにゲティの秘書からゲイル宛に呼びたての電話がかかる。彼の元へ赴くと、身代金を孫に貸し付けるという名目で税控除内の金額を払う。その代わりに子供たちお監護権を元夫に返す契約書を交わせという。税控除や送金にかかる金額は200万円、現在の交渉金は400万円。どう足掻いても足りない金額だが、ゲイルはあえて400万円をある体として支払いをすると公表した。動揺を見せたゲティはチェイスを呼び出し問い詰めるが、チェイスはそんな彼の性格を逆手に取り、煽り、関わらないための手段が送金であることに気づかせ、400万全てを支払わせることに成功する。
 
ゲイルはチェイスと共に身代金の受け渡しに行き、逃げ出したポールを探すゲイルたちと、ハメられたと気づいた誘拐犯たちもポールを血眼で探す。チェイスとチンクアンタが同時にポールを見つけ、チンクアンタの「早く国外へ逃がせ」との言葉の元、ポールは無事に保護される。
ゲティはその後、大事な絵を抱え、生涯を終え、彼の美術品のコレクションはゲティ美術館へと運ばれ、遺産は慈善事業に使われたのだった。
 
 

実在した世界一 "ケチ" な石油王

「お前はゲティ家の人間だ」「ゲティ家は一般人とは違う」映画の冒頭から幾度となく繰り返されたこの言葉。ゲティは当時世界で最も資産を持つ大富豪と謳われたが、本人曰く「資産を数えられるうちは富豪とは言わないのではないかね」とも言っていたという。彼は1948年にサウジアラビアでの石油輸入を開始し、それを運ぶためのスーパータンカーを作ったことでその後の成功に繋がっていた。
 
お金持ちだから羽振りがいいだなんてことはことはなく、ただ、だからこそそれだけの資産を築き得たのだなとも思える。「余るほどお金があるくせに」使うべきを見極め、税金に無駄に取られることすらも避けてきたゲティは世界一の倹約家とも言える。
ただ今回は贅沢のためでなく、孫の命がかかっているのに理解出来ないと思う反面、確かに身代金を払ったから確実に生きて帰してくれる保証がないとも言える。(実際に犯人の顔を見てしまって殺されかけるシーンもあった)
 
そして「私には孫が14人いる。ここで身代金を払えば他の孫達も誘拐されるかもしれない」というのは、言い訳込みだとしてもちょっと説得力すらも感じたんですよね。だからといってポールが犠牲になっていいわけはないけれど、今回も身代金の大金目当てで犯人の振りをして手紙をよこす人が多かったことも踏まえると。(汚い世界だけれど、お金は人を変えるからなぁ) そういうバカを考える連中というのはいつの時代でもいるんだし。結局はVSゲティに対する心理戦になりましたけどね。
 

誘拐事件を通してポールを最も想った男

母ゲイルも、祖父ゲティもポールに対して愛を持っていたのは事実。だけれども、ゲイルはゲティがいなければ息子を取り返すことは出来ない。ポールは孫が大事で愛してはいるが、それと大金を身代金として受け渡すことは全くの別物と捉える。その行き違いと身代金交渉のために呼ばれたのが、ゲティの元で働いてきたチェイス。最終的にはゲティが作り上げたと思い込む、周りの従事や環境は直接的にはチェイスが成し遂げたことであり、全ての実権を握れるのは自分であると動揺させたチェイスの交渉術ありきでポールは無事に家族の元へ戻ることが出来た。ただそこでゲティが払ったお金もポールの命を何より優先して、ではないし、ゲイルが他の方法でお金を集めたり借りたりという行動に出なかったのはやはり、身内に富豪がいるんだからどうにかできるでしょって自分も周りも思ってたということかなぁと思ったり。
 
そしてこの誘拐事件、7月に誘拐され、一度誘拐先が変わったとはいえ保護までに約5ヶ月かかっているんですね。耳や髪を家族に送り付けるまでにも4ヶ月を要している。そもそも時代が70年代なこともあり、現代と平行線で比べるわけにはいかないけれど、誘拐犯はそんなに悠長だったのか?と正直思った。監禁していたとはいえ、5ヶ月生きながらえさせるためにも食料や世話も必要だし、その間の犯人たちの生活もある。誘拐犯目線でプラスなのか?と思っていたけれど、ラストの雇われ女性達が大金を数える様を見ると、初回提示の6分の1近くても十分な額ではあったんだなぁ。
 
(このシーンかっこよさまでありました)

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チンクアンタが徐々にポールを護る側にシフトしていくの、そんなに入り込んでしまうものなのか(過激派ってそんな優しくなさそうなイメージ)って思っていたのも、この誘拐期間が半年近くあったことを踏まえるとちょっと納得しましたね。近親者に世界を代表する大金持ちがいたって、彼自身がそうなのではなく、逆にその状況下でこじらせてしまった一面や悲しい想いを聞いたがゆえに情が移ったり、根底では自分たちと変わらない面さえも感じたのかもしれない。
結局、最もポールの無事を考えて、尊重して行動に起こしたのが皮肉にもチンクアンタだったとも言えるし。映画的には非常にいいヤツなんだけれど、ただ誘拐監禁続けたマフィアたちの爪の甘さが気になりもしたのでサスペンスとしてはちょっとマイナス。面倒や見張りを任されていたはずなのに、ボヤ騒ぎでも一度見逃したり、結局最後も助けてあげたり。わたしが知ってるマフィアだったらチンクアンタは人間の形を保っていないと思う(そうなってほしいわけではない)。まぁちょっとのご都合主義には目を瞑ります。
 

映画の内容以上に世間を騒がせた事件

大富豪のゲティを演じたクリストファー。こちら急遽の配役変更により、差し替えのための撮影を僅か9日間で行われたとのこと!
元はカメレオン俳優として有名なケヴィンスペイシーが演じており、例のセクハラ案件により降板となってしまったんですね。それ事態には特には触れませんが、個人的に俳優としての彼は非常に大好きだったので元の作品でも観てみたかったなぁとも思う。。予告動画ならありましたけど。
こちらがケヴィン演じたゲティ。
 代役となったクリストファーは88歳なのでそのまま演じられ、57歳で演じていたケヴィンは特殊メイクでこの役に臨んでいたとのこと。
 

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映画を通して観て、ちょっと嫌味な爺さんの感じも頭がいいがケチなところも、本当にしっくりきすぎているので結果的に正解だったとは思うけれど。
ケヴィンだけではなく、ミシェルのギャラがマークの1%しかないことも話題になっていたし、色んな意味で映画同様お騒がせでもあった一本。お金持ちになんてなったことないからやっぱりその感覚は分からんな~~~!!