映画「ドリーム」ネタバレ - 宇宙と数字の先を読んだNASAのデキ女

本日9月29日より公開された「ドリーム」 正直期待以上に素晴らしい作品だったので早速レビューですよ!華金なんて関係ないよ!
 
 
ドリーム(2016)
原題:Hidden Figures

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監督:セオドア・メルフィ
出演:タラジ・P・ヘンソン/ジャネール・モネイ/オクタヴィア・スペンサー/ケビン・コスナー 他
 
★★★★☆(4.4) 
 

あらすじ

 
1961年バージニア州ハンプトン。黒人女性のキャサリン、メアリー、ドロシーの3人はNASAのラングレー研究所で計算係として働く優秀な女性たちであった。当時アメリカはソ連との有人宇宙飛行の成功に切磋琢磨しつつ一歩遅れている現状だった。そんな折に計算係のキャサリンは曲者のハリソン本部長の計算係を命じられる...
 

ストーリーとネタバレ

 
人種差別やジェンダー差別もまだ色濃く残るバージニア州では、人種差を認められており、黒人でさらに女性が研究職や技術職などもってのほかだった。
NASAのラングレー研究所で働くキャサリンらは、頭脳明晰で数字を扱わせたら右に出るものはいない実力を持っていながらも黒人であることから認めてもらえない現実にぶつかっていた。ラングレー研究所では施設や食事場所、トイレまでもが「白人専用」「非白人専用」として共に同じ職場で働きながらも大きな差別を受けていた。
 
当時アメリカはソ連との有人宇宙飛行成功の競走をしていた。ソ連に先に人工衛星の打ち上げを先こされたアメリカはソ連を超えるべく、有人飛行の研究を進める。
そんな折に西グループの黒人女性の計算グループに辞令が降りる。メアリーは昇格した先でロケットの粗を見つけたことで、そこの上司から「技術者になるべきだ」「私だってユダヤ人だ。みんな夢に生きているんだ」との言葉を受けるが、黒人女性が技術者など、と慄く。ドロシーは何度も昇格申請を出すも、ミッチェルに黒人の管理職など認められないと突っぱねられてしまう。
有人飛行の計算に人生をかけるハリソン本部長の計算係に解析幾何学を使えるものが必要だと、キャサリンはそこで働くこととなる。また夫と死別し、3人の娘を養うキャサリンはパーティーの場で、軍人のジム中佐と出会う。
 
彼女の頭の良さと計算の正確さ、「数字の先を読む」技術に周りは徐々に彼女を認めてゆくが、差別の形は残ったまま。黒人用のトイレは800m先の西館にしかないし、コーヒーポッドまで「非白人用」を設置されてしまう。
 
計算段階での飛行すらままならない中、ついにソ連が有人飛行を成功させたとのニュースが入り、ラングレー研究所は更に激務となる。しかしある日離席が多いキャサリンにハリソン本部長は「君には期待しているのに毎日40分もどこに行っているんだ」という。
その言葉にキャサリンは声を荒らげ、「私の使えるトイレは800m先の西館にしかないし自転車だって使わせてもらえない!毎日朝から晩まで身を粉にして働いているのに誰も私のコーヒーポットに触れようともしない!服装も決められ、アクセサリーは真珠のみと言われた。黒人女性の給料で真珠なんて買えるわけもないのに!トイレくらい認めてください」その言葉を受けたハリソン本部長はすぐさま「白人用」の注意書きをとっぱらい、席から近い場所を使えという。
 
またメアリーは技術者となるための資格を取るのに必要な「白人学校への入学」を申し立てる。「前例を出すことの重みは分かるけれど誰かがやらねばならない」「判事の今日の公務で100年後も意義のあるものは何ですか?あなたが前例を作るのです」との言葉に、夜間のみの通学を認められる。
 
キャサリンは常に正確な値での計算をするべく、国防省の会議に参加し、計算式を導き出すことで宇宙飛行士のグレン、役員の者からも一目置かれる存在となる。
有人飛行の打ち上げを目前にして、キャサリンはハリソン本部長の計算係を解任される。IBM(コンピュータ)の導入により、あの早さに人間では敵わないとして西グループに戻されてしまう。
解任にはなったが彼女の働きを功しまたジムとの婚約祝いに、チームから真珠のネックレスを贈られる。
 
アメリカ全土が注目する初の友人での宇宙飛行の直前。IBMでの計算とそれまでの数値との差異が発生する。グレン飛行士にそれでも決行の旨を伝えると「あのやり手の計算係の彼女がその計算で正しいと言うなら飛ぼう」と言う。駆けつけた職員から資料を受け取り検算を済ませたキャサリンは急いでハリソン本部長の元へ向かう。
発射は成功、7周の地球周回のち帰還を予定していたが、半ばで遮熱盤の溶解が発生する。火だるまのごとくなりながらも、緊急処置をとらせることでグレン飛行士は無事に計算通りの場所へ帰還、有人飛行は成功を収めた。この8年後にアメリカは月面到達までを叶えることとなった。
 
 

感想とか文句とか

 
もうね、冒頭3人を乗せた車がエンストして、通りがかりの警察に身分と事の次第を説明して遅刻回避のためNASAまで先導してくれるシーン。メアリーがひどい煽りのごとく車間距離詰めて「何をしてるってそりゃ私達は今白人警官の後ろにつけて追いかけているのよ!(   ´∀`)ハハハ」のシーンが好きすぎてですね!もうあの時点で「絶対この映画好きだわ」と思えましたね。
 
まず全体のテンポが良い上に、音楽もキャサリンたちのファッションも抜群にハイセンスでずっとドキドキしながら観てたしあっという間の2時間弱。音楽は中盤、キャサリンがジム中佐とドライブをして自宅で過ごすシーンで流れていた音楽。ちょっとまだ曲名等は分からないんですがあの曲が一番好き。ファッションはみんな素敵だったけれどちょっとビビッドでスタイリッシュなメアリーの服装がとっても可愛かった~~!
 
ストーリーとしては、数学者×宇宙舞台の実話なのだけれどバランスもよく、どっちの傾向を好きな人でも楽しめるかと。
キャサリンだけでなく、メアリーとドロシーにもそれぞれの壁にぶつかり、乗り越えて願う地位や資格を認めらるまでがきちんと描かれていて満足。ジム中佐はいい癒しになっていたけど、メアリー夫婦の形が好きだなぁ。旦那さんが黒人女性に技術者なんて無理だ、ずっと仕事ばかりして子供のことも知らないことばかりだ、との気持ちも分からないではないけれど、最後が認めてくれるのも。
黒人差別は白人に差別される黒人が一番キツイのはもちろん、その環境が浸透しすぎた結果、黒人自らも自分たちを卑下し始めてしまう。またそれをする白人だって「なぜ黒人はダメなのか」を答えられるものは少なく、差別というにはひいては関わった者みんなが被害者でもあるなと改めて思った。「黒人には違う対応」という認識を広めたこと自体が、「なぜそうなのか考えること」を奪っているんだと。ミッチェルがその象徴として描かれていたけれど、とてもうまいキャラクターだったと思う。
 
ハリソン本部長は真っ直ぐで事前の「曲者でなかなか計算係も長続きしない」というほど癖も強くなかったように思う...。ケビン・コスナー大すきなのですごくいい役だったけれど。上司が誰よりも遅くまで働いているなんてもう滅多に見ない光景ですよ!!
 
全体的に非常に満足だけれど、強いて言うなら最初から最後までグレン飛行士(元海軍)がかっこよすぎるしいい人すぎる。あれはもう完全にアイドルだし、海軍等から来た飛行士たちが粒ぞろいすぎてわたしゃびっくりですよ。
 
 
 
そういえば戯言なんですけど、まだ暫くは「ララランドより」とか「ララランド以上に」とかいう評価や広告出すんだろうけど、この手法本当に苦手で。今作でも引き合いに出されていたけど、ジャンルも主軸も違うし、何よりいい作品を褒めるときに他作品を引き合いに出さなければアゲられないとか評価できないって寂しいことと思う。(参考にするのは別)
何かを落としてそれを上げて見せるのではなく、純粋にそのものの良さや醍醐味を伝えられるようでありたいなー。