プリズナーズ(ネタバレ)

プリズナーズ(2013) #クライムドラマ #サスペンス
 
ヒュー·ジャックマンが主演を務めましたこちらのプリズナーズ、いつか観ようみようと後回しにしてやっと鑑賞。もっと早く観ればよかったけれど、全体的な雰囲気で気分に左右される映画ではある。
 
★★★★☆(4.0)
 
«あらすじとか前知識とか»
 
感謝祭の日ケラー·ドーヴァー(ヒュー·ジャックマン)は妻、息子、娘(アナ)と共に、隣家のフランクリン一家(妻、長女、次女(ジョイ))とお祝いをして過ごしていた。
アナとジョイはまだ小さく、好奇心が旺盛で家の中を走り回ったり、近所に止まっていたRV車のハシゴに興味津々で登ってみたりするのを互いの兄と姉が目を付けながら過ごしていた。
 
大人達も盛り上がる中(フランクリンのトランペットは本当に下手でクスッとしてしまう)、ケラーの娘に「パパにもらった赤いホイッスルを探しに(ジョイと)お家に帰っていい?133日前になくしちゃったの!」と言われ、兄ちゃんたちと一緒ならいいぞ^^と任せたが最後。
お兄ちゃんたちは何も知らず別室で映画を観ているところに気づいたケラーパパは真っ青。妻を連れて家に戻るもどこにもおらず、総動員でジョイとアナを探す中でお兄ちゃんが「あのRV車でアナたちがふざけて遊んでたんだ!きっとあのとき中に誰かいてアナたちを連れていったんだよ!」というところから警察にも届け、家族も必死に探し続ける日々が始まった。
 
「娘を取り戻したいがために、してはいけない領域まで父は踏み入れる...」といった文句がパッケージにあったので、お父ちゃん疑わしきは罰せよでコロしちゃうか関係ない人を引きずり回して娘は失い、自分もタイーホ的な感じかなと予想した。
 
 
以下ネタバレご注意!!サスペンス調なので未見はダメよ!!
 
 
RV車の持ち主ということでまず疑われたアレックス。10歳児ほどのIQしか持ち合わせていない彼に犯行は無理だとわずか数日で釈放されてしまう。過保護な叔母のばあちゃんが全てを包みこむ。そして怒り狂うパパ。それもそうだ娘の命がかかっているんだもの、絶対に違うという保証もないのになぜ釈放する!逮捕しろ!!約束しろ!!と今作のヒュージャックマンは終始頭プッチンですよ。娘が誘拐されたんだから当たり前ですけどね。
 
アレックスの件ののちに、毎度違うサイズの子供服を買いにくるボブという怪しい男が現れてロキ刑事はここぞとばかりに問い詰める。ケラーの自宅前で事件の解決と娘たちの無事を祈る周回に来てた挙動不審で刑事に追いかけられて逃げた人ですね。
しかしこのボブ、子供を誘拐した場所の地図を描くという名目で(手錠はしたまま)迷路のような絵を描き続ける。しびれを切らしたロキ刑事がブチ切れて掴みかかる!!仲間の刑事×2が止めに入る!ボブに拳銃を奪われて自殺される!!!ロキ刑事は厳重注意のみ。
 
え??
そんなことある?拳銃ってホルターに入ってるんですよね、両手前とはいえ手錠したままでそんなすぐ奪われるた上に自害なんて、ロキ刑事だって本来謹慎くらいつきそうなものでは…?
 
先にラストまで言ってしまうと、アレックスの叔母が黒幕でして、子供を亡くした悲しみが限界突破した結果、こんな報いを受けるならいっそ神に背かって生きてやる!!と小児の誘拐やコロしをしていたと。旦那が亡くなった(小児性愛者の神父の元に自慢と煽りをした結果に殺されて、地下室で半ミイラ化)あとも1人で続けていたんですね。
なんならアレックスとボブもその被害者だったと!!ばあちゃんは家に真っ黒い「これを飲むと反抗できなくなっちゃうよ」ジュースを常備しており、これを常用して判断能力を鈍らせていた。
いつもばあちゃんがいたからアレックスは本当のことが言えなかった、風ではあるんだけどアレックスはどこから正気がないのかがイマイチしっくりこない。
アレックスの釈放シーンでケラーが掴みかかったとき、ケラーにだけ聞こえるように「(あんたの娘は)僕が一緒にいる間は泣かなかった」と言ったり、乗せたのは確実という感じなのにRV車に子供たちの痕跡が一切残っていなかったり。(暴れなかったとしても服の繊維や髪の毛くらい落ちているものでは?2人もいたのに何も残らないのは考えにくい)
だから本当は全て計算してるサイコパスで警察の前でだけキチガイぶってるんだと思ったんだけどなぁ。
 
中盤、犯人はアレックスだと疑ってきかないケラーはついにアレックスを誘拐、両親生存時の持ち家に監禁して拷問し続ける日々が始まって。ジョイの父のフランクリンも連れだって「娘を助けるためにはコレしかないんだ!!!」と叫ぶ姿は一重に犯罪だから、それは間違いだからとは言えない権幕があった子どもの誘拐事件の生存確率は1週間を過ぎると…とよく言われているし親の精神にも異常をきたす頃。(この時点で確か3~4日目?)
この拷問シーン自体はあまり直接的には描かれないが、自分たちのしていることに耐えられなくなったフランクリンが妻に事の次第を告白し、結果3人でアレックスの元へ行くんだけれど顔に被せられた布をとったアレックスの腫れ上がった顔が物凄く恐ろしくて。私は直視できなかった…。
このときケラーは情を感じないように、完全密室の光の暗室に作り替え、居場所を吐くときのためのパイプと熱湯か冷水しか出ないシャワーだけ残して、拷問を続けるという。止めるならお前が助けてやれよ、とケラーが出て行ったあとに残されたフランクリンは壊そうとするんだけれど、そのあとの妻の言葉がすごくリアルで。自分で手は下さない、神に許されないようなことも自覚しながらもした決断が女性らしいというか、妙にリアリティが強い。「助ける必要はない、娘のことを考えて」「あいつにやらせておけばいい」ってママ…怖いよ…
 
飲食は与えられず、熱湯or冷水の強制シャワーだけって、そもそもすでに死ぬのでは?とか、凶悪犯罪者でも光の入らない独居房に放置されると1週間たたずに精神崩壊するというくらいなのに、アレックスはそういった症状はなかったのか?とか、ラストでアレックスを警察が見つけるシーンで家の外まで叫び声が聞こえていたけれど、その環境で数日間過ごしたのちにそんなに声出るわけなくない?なんてやぼったいことは言っちゃいけませんね。
正直ツッコミどころは多い気もする。第一アレックスの家を捜査したときにその怪しいジュースとか庭の穴とか見つけられないのは無能すぎるでしょと思う。
 
 
そういったリアルな身体的衰弱の描写がちょっと気になりはするけれど、その分最後のかぼそい笛の音だけ聞こえて終わるシーン。あそここそリアルでゾクゾクしましたね。
 
しかし最後までケラーが娘の無事のためにまっすぐ、何を犠牲にして信仰を裏切ってまで奔走し、結果尋常ではない行動にも及んだところを貫いていたのは非常によかった。ヒュー・ジャックマンの疲れ切った必死の演技はやはり最高。