映画「雨の日は会えない、晴れた日は君を想う」ネタバレ - 繋がりと破壊のその先に見えたもの

公開時に友人が観に行っていて気になっていたコチラ。ひたすら主演のジェイクに惹き込まれる、そして久々に邦題がヒット。
 
 
雨の日は会えない、晴れた日は君を想う(2015)

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監督:ジャン=マルク・ヴァレ
出演:ジェイク・ギレンホール/ナオミ・ワッツ/クリス・クーパー 他
 
★★★★☆(3.9)

あらすじ

 
ある朝、夫婦で車での出勤中に交通事故に遭い、妻を目の前で亡くしたデイヴィス。妻なのに、悲しいはずなのにそんな感情を感じず涙も出なく、至って今まで通りの生活を送る。勤める金融会社の上司にもあたる義父の「心も体と同じだ。一度分解して点検し、組み立て直さなければいけない」との言葉を受け、字の通り「破壊」に何かを探し始める...
 

ストーリーとネタバレ

 
金融業界に勤めるデイヴィスは義父のコネ入社。妻と2人で暮らし、出社時には2人で車で出かけてゆく。妻の小さな愚痴を聞きながらその日も出かけると、事故に遭い不運にも妻だけが亡くなってしまう。
周りは彼を心配するが、悲しいとも思わなければ涙も出ない。妻が亡くなったというのに。いつからか心までも壊れていたのか。
 
そんな折に義父があるアドバイスをする。「人の心も車と同じように修理が必要だ。壊し、分解して隅々まで点検をしてまた組み直さねばならない」との言葉を受け、字の通り「分解と破壊」を始める。家の冷蔵庫、会社のパソコン、トイレの個室のドア、義父の家の電灯に、果ては結婚生活の象徴ともとれる家そのものまでを壊すようになる。
 
妻の命日にその病院で買おうとしたチョコレートが機械不良で商品が出てこなかったことを受け、私情を織り交ぜて管理会社へ何通も手紙を出すデイヴィス。するとある真夜中に顧客センターのカレンから詫びの電話が入る。それをきっかけに徐々に話す回数が増え、会って話をし友人となる。彼女には上司にあたる恋人と、15歳の息子のクリスがいた。プライベートな話もし、カレンともクリスとも親しくなったデイヴィスは頻繁に彼女の家を訪れる。
その傍らで「壊す」ことは止めておらず、会社にも顔を出さなくなり、時にはクリスを連れて破壊を楽しむこともあった。父のいないクリスにとって、破壊や銃の使い方や他の大人と少し変わったデイヴィスはある種の父親のような感情を抱いていたのだろう。
そんなことを繰り返すうちに、だんだんと妻のことを思い出すことも増えてくる。彼女のメモが出てきて、彼女を愛していた気持ちを取り戻してくる。
想いに気づいたデイヴィスは義父にこれまでの失態を謝り、「確かに彼女を愛していた。けれどその気持ちをおろそかにしていた」と伝え、また手を取り共に仕事をすることになる。
カレンたちともよい関係を築きながら、義父と共に子供たちのためのメリーゴーラウンドを建て、クリスの手紙から指定された場所で高層ビルの爆破解体を眺める。
 

感想とか文句とか

 
ヨーゼフの"破壊と創造"を思い出した作品。壊れた空虚な心を取り戻すため、大事な"何か"を取り戻すための"破壊"を繰り返すことで見えてくるものを探すこと。
 
とにかくセンスのいい映画だなぁと。配役も素晴らしいし、ジェイクの醸し出す雰囲気もぴったり。徐々に激しさを増し、破壊を繰り返すシーンと序盤~通常時の口数が多くなく、淡々とした雰囲気の対比が良い。
音楽もよかったなぁ...
 
よく「悲しみや苦しみは時間が解決してくれる」と言うけれど、私は解決してくれるのは時間ではなく「繋がり」の有無だと思っていて。今回ではそこにカレンとモリス親子、そして「破壊」という物理的な刺激によって変化の過程を観せられる。
自宅までもハンマーで自力解体するシーンはスカッとすると共に、これ建て替えどうするの...お掃除大変すぎる...とか現実的なことを考えてしまう(笑)
 
そしてタイトルの「雨の日は会えない、晴れた日は君を想う」の意味と亡き妻の愛を感じるとすごくしんどくなる。
夫婦でありながらどこかさみしさを感じていた妻が暮らしの隅々に残していたメッセージ。その1つが車のサンバイザーの裏に隠されていて。サンバイザーだから雨の日は使わない(会えない)、けれど晴れた日くらいは私を想って、の気持ちがヒラリと落ちたそのときやっと、愛されていたこと、自らも多くの愛を持っていたことが溢れて気づく。
なるほど!!と思うとともに切なさがこみ上げてどうしようもなかった...。なぜこうもその時には気づけないのか、全て失くなってからなのかと問いたくなる。
事故するまでのドライブ(出勤)シーンを観て、妻の顔を微笑んで見ながら会話していたし愚痴を言いながらもニコニコしていたし、そこまで夫婦仲が破綻していたという感じではないけれども、2人にしか分からないこともあるよね。
 
 
1つ気になるのが、亡くなった妻が以前子供を身篭っていたけれどデイヴィスには秘密で堕ろしていたという。そしてその子はデイヴィスではない他の男性との子であったという話だったけれど、あれは本当なのか、さすればその話は必要だったのかという疑問が残る。。ラストのメリーゴーランドを建てて過ごすシーンから、浮気は義母の嘘では説も聞いたり聞かなかったり。子供に何らかの異常が見つかっていたが、自らになかなか見向きもしてくれない旦那に話せず堕ろしたのでは、となると義父母との和解後に真実を知ったことになるのか...?
また見返してその辺りもしっかり確認したい。
 
原題はDEMOLITION(破壊/解体) 映画を観るとこれも納得できるけれど、今回は邦題もとても好み。(ちょっとラノベっぽいタイトルと思ったのは内緒)
 
ちなみに主演のジェイクはつい最近「プリズナーズ」でも拝見してました。子ども誘拐がベースなので重いですが、なかなか考えさせられる1本。

 

www.bmxrip.com

 キレ者の真実を追いかける刑事という今回とはまた違う役どころもぜひ。