映画「スイス・アーミー・マン」ネタバレ - 孤独で生きる人間、愛を望む死体

行ってまいりましたスイスアーミーマン!「ハリーポッターのダニエル・ラドクリフが死体役で出演」というパワーワードに惹かれて鑑賞。
 
スイス・アーミー・マン(2017)

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監督:ダニエル・クワン&ダニエル・シャイナート
出演:ダニエル・ラドクリフ/ポール・ダノ 他
 
 

あらすじ

 
無人島に漂流し、孤独に耐えられず自殺を決めるハンク。そんな矢先に、波打ち際に1人の男が倒れていることに気付き一抹の希望を手にする。
しかしその男はすでに死体となっていた。再び絶望しかけるが、彼は"マルチな道具"である万能死体=スイスアーミーマンであることに気づく...
 
 

ストーリーとネタバレ

 
嵐に遭い、無人島に漂流してしまったハンク。船も通りが駆らず、スマホの充電もあと僅か。待ち受けの女性に希望を持ちながら、島のゴミにSOSのメッセージを書いて海に放流する日々にも絶望したハンクはついに自殺を決意する。
いざ首をくくろうとしたそのとき、海辺に1人の男が倒れているのを見つけ、駆け寄るも男はすでに死んでいた。次こそと自殺をしようとしたそのとき、死体がおならをしていることに気づいた。死亡による腐敗ガスが出ており、その勢いは徐々に増してジェットスキーさながら海を渡ることができたのだ!
 
無人島からの脱出に成功し、森を彷徨う中で2人は徐々に心を通わせていく。ガスが出ているだけの死体と思い、一度は置いて(乗り捨て…)いこうとしたハンクだが、心細さから死体と行動を共にする。やがてその死体はガスだけでなく、雨水を体内に貯め込み、刺激することで水筒のように水分を補給し続けることが出来た。次第にその死体は喋ること、意志の疎通が可能であり、メニーという名であることが分かり2人は更に心を通わせる。
 
メニーはゴミとなった雑誌のグラビア写真を見て女性に興味を持ち、ハンクの待ち受け画像の女性・サラに愛情を感じるようになる。また女性を見ることでアソコが反応するのだが、それはコンパスとなり方角を知る手がかりとなった。サラを知るため、愛情を深く理解するため、ハンクはサラに扮し女装をして出会いのバスのシーンを再現する。メニーの死後硬直により体がナイフやノコギリとして機能することを利用して、再現用のバスや「フォーンリバースカフェ」と掲げた2人だけの世界を作り、このままの日々が続いてもいいと思うほど充実していた。
 
しかしサラはハンクの妻や彼女ではなかった。彼はバスでいつも会う彼女に一方的に恋をしており、待ち受けも隠れて撮ったものだった。その事実をメニーに伝えると、嘘をつき見せかけの愛情を感じさせたハンクに憤りを感じると共に、愛を失った反動で身体の機能が徐々に働かなくなる。そしてそんな最悪のタイミングで野生の熊が現れて襲われてしまう。危機一髪木の上に逃げることが出来たが、ハンクは落ちかけたところを熊に捕まり、引きずりおろされてしまう。その様をメニーは淡々と見つめながら、「なぜ"そういうものだと"何でも判断する?」「生きようとしていたい、思いがいつもある」「人前でおならをすることや誰もしないことをダメというが、1人がそれでもいいと言えばさみしくない」と訴えかける。それに応えるハンクの気持ちに心動かされ、メニーは最期の力を振り絞り、熊を退治する。
 
朝を迎え、ようやく住宅街に出るとそこにはサラが家族と暮らす家があった。今度こそ話しかけるんだ!と背中を押されるが、もちろん勇気は出ない。そしてメニーは動かなくなっていく。外の様子に気づいたサラが駆け付け、救急車がやってくるがその様を受け入れられないハンクはメニーを連れ出し、2人で過ごした場所へ行き、共に過ごしたあとを追ってきた皆に見せる。海辺まで彼を連れてゆくと、ガスの勢いで再び海の向こうへ渡っていくのだった…
 

感想とか文句とか

 
「ダニエルくんが死体役」「死後硬直と腐敗ガスで万能死体」という時点でB級映画な雰囲気を感じてはいたけれど、このやりたいこと詰め込んで見たことのない画をひたすら観せられる感じは非常に楽しかった。
 
公開数日前に改めて予告動画見て結構笑えたので決めたけれど、私のツボにはまぁまぁといった感じ。下ネタ系がダメな人には合わなそうだけれど、無人島で死体と2人という極限状態だし許しちゃう。笑
しかし事前に公式サイトでメニーの機能10選★を見ていたので、この辺をしっかり描いてくれるのかと思っていて。なので絶望したハンクにメニーが「僕のようにマルチな道具が~」と話したあとに、5分ほどでさらっとこの辺の機能を済ませちゃったのはちょっと残念。死後硬直の効果で身体やその一部が武器さながらになりサバイバルを進めていくのだけれど、メニーとの関係を築くところをもう少し削っても入れてほしかったかなぁ
 
サバイバルアクションでコメディタッチかと思っていたけれど、後半は感動と現実感に胸を打たれるストーリー。
ラストはこれからも独りで生きていくであろうハンク(しかしメニーと過ごした日々で殻を破る。父親との関係もそう。)と、愛情や人との繋がりを誰よりも求めていたメニーがまた死体として海を彷徨い流れてゆく。
非常にシュールな絵が続くが、人間としての生き方、周りに合わせて同じように過ごし目立たないようにすることの意味。自分の人生について向き合うことを考えさせられるような、深く考えずにただ感じるままに観てほしいような、という映画です。(笑)