とらわれて夏(ネタバレ)

とらわれて夏(2013)
監督:ジェイソン・ライトマン
出演:ケイト・ウィンスレット/ジョシュ・ブローリン/ガトリン・グリフィス 他
 

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離婚によって軽い鬱状態のような母·アデル(ケイト·ウィンスレット)と2人で暮らす息子·ヘンリー(ガトリン・グリフィス)が夏の日に出会った脱獄犯·フランクと過ごすある5日間の話。
 
 
★★★★☆(3.7)
 
 
«あらすじとか前知識とか»
アデル(ケイト·ウィンスレット)は息子のヘンリー(ガトリン・グリフィス)と小さな街で2人暮らしをしている。離婚をしており、元夫は再婚をしている。ヘンリーは"愛"を失い、何事にもやる気を見出せなくなった母を献身的に支えながらも2人平和に暮らしていたある日、買い物中のスーパーで「俺を車に乗せろ。」と強引に迫ってきた男は脱獄犯だった...。
 
 
 

ストーリー(ネタバレしてます!!)

 
夏休み中のヘンリーは、シングルマザーになって以来、どこか元気のない母アデルを支えながら過ごしていた。母の誕生日には「1日夫券」をプレゼントし、デートをしたり母の得意なダンスを習ったりと思春期の息子とは思えぬ仲の良さで、父·ジェラルドとも月に何度か再婚した家族と一緒に食事をとり、良好な親子関係が続いていた。
 そんなある日、買い物に寄ったスーパーでヘンリーは負傷したひげ面の怪しげな男・フランクに声をかけられる。共にアデルの元へ行き「車に乗せてくれ」と頼まれるが、見ず知らずの突然な申し出にアデルはもちろん断るが強引に迫られてしまう。
帰宅するとテレビではフランクが今朝刑務所を脱獄した囚人だという報道がされていた。恐怖を感じながらも、まるで父親のようにヘンリーに接してくれるフランクにアデルは愛情を感じ始める。
フランクは大量の桃を使ったピーチパイの作り方を教えてくれ、家の修理を買って出てくれ、息子達と野球をしたりアデルとダンスを踊ってくれたり、自然と3人の関係は代えがたいものとなっていった。
 
しかしテレビをつければ毎日のように脱獄犯フランク逃亡中のニュースは流れ、現実を無視することも出来ない。けれども再び見つけた愛を手放したくないアデルと、母に幸せでいてほしいがこのまま母を奪われてしまうのではと不安なヘンリーはついに、3人で高飛びし新たな人生を歩む決断をする。
車で家族を装い出ていこうとした日は学校の始業式の日。小さな町だからこその距離の近さから近所の奥さんは突然家の中へ入ってくる。別れを言えない代わりに父の家に手紙を届けた帰りに警察に保護されてピンチを乗り切ったと思ったのも束の間。幸せまであと一歩というところで近所の通報もあり、フランクは逮捕されてしまう。逮捕の直前に、匿っていたことを隠すために誘拐・監禁していたという状況まで作って。
 
時は過ぎ、ヘンリーは大人になりピーチパイをメインとした店を開いていた。その記事を読んだフランクはヘンリーに手紙を出し、出所と同時に待ち続けていてくれた愛するアデルとやっと一緒になれるのだった。
 
 
 
 

感想とか考察だとか

 
とにかくヘンリーくんがいい子!!!一日夫券なんて、13歳の息子がそんなやさしさ信じられないと思う気持ちの傍ら、常に母の様子を気にして行動を起こすヘンリーもまた"とらわれて"いる身であるのだろう。しかし思春期真っ只中で、女性やその身体にも興味が出てくるお年頃で戸惑いを感じながらも、それだけの行動をとることが出来るヘンリーくんはいい紳士になる。
 
またアデルとフランクはともに所謂バツイチであるのだが、フランクのそれは刑期を務めることとなった原因に紐づいており、セリフでの説明がないことが対照的で印象的であった。アデルの離婚はヘンリーを産んだあとに流産をしやすい身体になってしまったことにあり、それが3度、4度と続き夫婦関係までも壊れてしまったのだった。
フランクは離婚というより、殺人を以て家族が崩壊したといった方が正しい。アデルの家で過ごすシーンの合間に若かりし頃のフランク夫婦の様子が映され、映像だけで説明をされる。幸せな結婚をし、子供を持ち子育てにも参加するフランク。しかし思い起こせば一緒に過ごしている時間や結婚パーティーの合間にも誰かと電話をしていたり、隙を見て会う男がいたり。
問い詰め、逆上した妻を突き飛ばしたことで打ちどころが悪く、妻は死んでしまう。呆然としていると上階からの水漏れに気づき、慌てて駆け上がるも風呂場で放置されていた赤ん坊は溺死してしまい(ここはハッキリとは描かれない)、家族を一度に失ったのだ。
この逮捕に至った一件の詳細や、家族がいたことについてフランクが言及するシーンはないが、だからこそ罪を背負い続け、一生それに"とらわれて"いくんだということが伺える。しかしそれであればアデルの家の2階の風呂水漏れを修理するよというシーン、もう少し意識するかトラウマが垣間見えてほしかった面もある。
 
そして10数年後にヘンリーがピーチパイの店を開いていたことが、ヘンリーとアデルにとってのあの夏の5日間を表していることがとても素敵だった。ピーチパイ食べたくなる…
 
ラスト、アデルが一番の愛を見つけたことは微笑ましくもあったが、"家族に犯罪者"となるとどこかで東野圭吾の「手紙」を思い出してしまう・・。この2人はもう年齢も重ねたあとだし野暮かもしれないが。