映画「アイ・トーニャ 史上最大のスキャンダル」ネタバレ感想 - 屈折した愛情とクズ揃いの登場人物たち

ここ10年ほどで日本でも絶大な人気を得てしたフィギュアスケート。今では男子も女子もゆうにこなしている「トリプルアクセル」を、アメリカで初めて成し遂げた女性のドキュメンタリー風ドラマ。ひたすら美しく滑るフィギュアスケート映画ではないですよ!
 
アイ・トーニャ  史上最大のスキャンダル(2018)
 

f:id:bmxrip:20180516000525j:plain

 
監督:クレイグ・ガレスピー
出演:マーゴット・ロビー(トーニャ・ハーディング)/セバスチャン・スタン(ジェフ・ ギルーリー)/ラヴォナ・ゴールデン(アリソン・ジャニー)/ショーン・エッカート(ポー・ルウォルター・ハウザー) 他
 
おすすめ度
★★★★★☆☆☆☆☆
・実話映画が好き
・ダメ人間がたくさん出てくる映画が好き
・どんな逆境も跳ね除けて夢をつかむ女性を応援したい
こんな方におすすめ\\\\ ٩( 'ω' )و ////
 

あらすじ

アメリカで初めてトリプルアクセルを女性で成功させたトーニャは、貧しい家庭で厳しい母に育てられてフィギュアスケートのプロの道を歩んでいた。しかしそんな彼女を成功に導いたのは、想像以上に厳しい家庭環境と過激な身内の存在だった。成功を掴むまでの彼女と、惜しくも一瞬で過ぎ去った栄光が崩れたワケとは──。
 
 

ストーリーとネタバレ

アメリカで初めてトリプルアクセルを飛んだ女性、トーニャは貧しくも厳しい母の元で育てられた。
現在から40年ほど前、ポートランドで育てられた4才のトーニャは、朝から晩までスケートの話しかしないスケート大好き少女だった。まだフィギュアというものに古い固定概念を持たれる時代の中、トーニャは一際目立ち、好きな衣装を着て、好きな曲を好きなように、氷の上でだけは縛られずに演じることを求めた。
 
スケートばかりしていたトーニャは、15歳のある日、ジェフと出会う。初めての恋だったそれは瞬く間に落ち、共に過ごす時間が長くなり親しみも深まってゆく。けれどジェフは怒ると暴力を振るう男だった、にも関わらず、「愛もあるけど手を出す」母親とずっと生きてきたトーニャには、それが別れる理由にはならなかった。
 
ジェフの支援も受けながらスケートを極め続けるトーニャは、ずば抜けた技術と才能があれども、思ったような結果を得られずにいた。しかしトリプルアクセルをついに披露することに成功したトーニャは一躍時の人となった。しかしそれとは反対に、ジェフとの関係も変わり始め、彼の暴力も増えるようになっていった。それでも根には愛があると信じたトーニャは彼と結婚し、スケートアメリカでの優勝もつかむ。
しかしオリンピックが近づくにつれて、プレッシャーからトーニャは失敗が増えるようになる。そんな最中にトーニャの元に殺害予告の脅迫文まで届き、心身共に疲れてゆくトーニャ。彼女を支えたい一心で、ジェフは友人のショーンに、トーニャがされたようにライバルのナンシーにも脅迫文を送りメンタルを揺らがせばいいのではと相談する。
 
しかしただのイタズラと心理戦のつもりだったジェフとは裏腹に、ショーンは"トーニャが勝つために"手下をナンシーの元へ向かわせる。
1994年の全米選手権で、ショーンの手下はナンシーの膝を棒で何度も叩きつけ、逃走を図る。すぐに事の次第を察したジェフはショーンを問い詰めに行くが、「本当に脅すだけなわけがない。」「これでボディガードが必要だという認識が広がれば俺たちの仕事が増える」「トーニャに脅迫文を送ったのも実は自分」「皆して俺を馬鹿にしやがって、お前らを仕切っているのは俺だと証明する」とヒートアップしていた。
しかし不慣れな襲撃の模様はあっという間に犯人確保に繋がり、ショーンもすぐにジェフが裏引きをしていたと告白してしまう。
 
警察やFBIに問い詰められても決して認めることはしないジェフと、元婚姻関係であったトーニャも関係しているのではないかと疑われてしまう。マスコミだけではなく、母までもが自分を欺こうとしていた。
不安で押しつぶされそうな中、トラブルをも乗り越えて演技を終えたトーニャのオリンピックはメダルには届かなかった。

試合後に裁判の続きを始めると、トーニャはスケート協会からの登録抹消とスケートの生涯禁止を命じられてしまう。ジェフのように服役を受けるからスケートだけは奪わないでと懇願するも虚しく、裁判は終わりを迎える。
スケート以外の生き方を知らなかったが立ち止まっては生きていけないと悟ったトーニャはボクシング界に踏み込み、幼い頃から身近であった『暴力』を縦に、新しい世界で生きていくのだった。

トーニャを守り続けた " 強かさ "

現代であればもっと叩かれていたのではと思うほどに、トーニャの性格や立ち振る舞いは強烈であり、だからこそ
観たものの心に深く刻まれる。それを愛することが出来るか拒絶するかは人それぞれ、まさにコーチのインタビューであった通り。
逆境にも、審査員と国の好みにも折れることなく貫き続けたその "強かさ" は、常人よりも特殊な環境で傷つきながらも育ってきた彼女が、彼女自身を守るために形成した人格の1つだったのだろうな、と。だからこそ、人生の全てを懸け、それしかなかったスケートを奪われたあとでも「プロボクサー」として生きる道を選択出来たのだと思う。いくら本当にそれしかしてこなかった、教養もなかった、とはいえ別の畑のスポーツを極める道を選ぶのは並大抵のメンタルでは不可能だろうし、その強さには勇気ももらえたほど。
 
 

登場人物クズ揃いの俳優魂が光る!

鑑賞後にまず思ったのが「こんなにクズしか出ない映画久しぶりに見たぞ...」ということでした。言葉悪いですが、本当に出てきた人たちどこを見てもクズしかいない。徹底して「トーニャ側の人物」の目線でしか描かれないので、周りもみんなそう。
トーニャは何かあるとすぐ人のせいにし、口も悪くてすぐ手が出る。旦那のジェフはDV、母は娘をまっすぐ愛すことは出来なく、手を出すのも早い。ジェフの友人は口ばかりで暴走する、そのまた友人は根っからのおバカさん。徹底しているとも言えるほどに。
 
とはいえそれは利点でもあり、トーニャ側の人間たちしか詳しく描かれなく、語ってくれるのもその者たちと振り切った点はすごく良かったな、と。これでトーニャの周りがクズな中で、ナンシーや他の人との差を見せられていたら、ここまで強烈には感じなかったかもしれない。ナンシーなんて冒頭から名前も出ているわりには、事件のポイント以外ではほぼ出番なし、もちろんフィギュアの演技シーンも無し。完全なる被害者としてのみ存在しているというハッキリした立ち位置と対比、そして氷上では美しく輝く演技の様とのギャップにより、心をブレさせることなく鑑賞出来る。
それを演じきった俳優たちの快演には感心のため息が出るほど。「なんだこのキャラクターめっちゃむかつくなぁ」と思うほど、演技が上手なのは分かるんだけれどモヤモヤしてしまうこの感じもやめられない(笑)マーゴットやセバスタは言わずもがな、トーニャの少女時代を演じたマケナ・グレイスちゃんの笑顔と不貞腐れた表情の可愛さにトキメキが止まらない...!!
 

f:id:bmxrip:20180516000500j:plain

 
このマケナちゃん、昨年公開された「ギフテッド」でクリス・エヴァンスとも共演しており、そちらでも所謂"天才"を演じていました。
(あれ、クリエヴァ(キャプテンアメリカ)ともセバスタ(バッキー)とも共演しているってことは……マケナちゃんも実質MCU女優かな?←こじらせMCUオタクの末路)
 
それから忘れたくても忘れられない映画界屈指のヤヴァイ母親。毒親の化身のような人物、身内だろうと他人だろうと職場だろうとお構いなしに絶対自分を曲げないし、どこでも言いたいことは言う。娘に対する愛は持っていても、愛で包むのではなく愛で殴る、といったタイプの方。とはいえ6回の結婚をしているということだし、トーニャがうまれるまではここまで酷くなかったor夢中になる矛先が違ったのか、もっとデレる面もあったのだろうか。などなど予想の範囲ですが、あの異常性はある種の清々しさも感じるほどでした。
 
 
 
 
DV元旦那を演じたセバスチャンスタンも出演する「アベンジャーズ インフィニティウォー」では、暴力ではなく銃で戦う美肌ヒーローに出会えますよ!おヒゲも無しで髪もサラふわ!

 

www.bmxrip.com