映画「パターソン」ネタバレ - 時間が経つほど沁みいる今年1のスルメ映画

よし今夜観にいこうと決心した朝、なんだかモヤモヤする最近にほんのひと匙の癒しと、気持ちの切り替えにと選んだのがコチラ。
 
パターソン(2017)

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監督:ジム・ジャームッシュ
出演:アダム・ドライバー/カーラ・ヘイワード/永瀬 正敏 他
 

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*写真は新宿武蔵野館にて。エレベーター3機の扉、ホール内にもコーナーたくさん設けられていました。平日夕方の回にも関わらず、8割ほど埋まっていた。

あらすじ

ニュージャージー州のパターソン市に住むパターソンは、妻のローラと愛犬フレンチブルドッグのマーヴィンとの2人と1匹暮らし。月曜から日曜まで、いつもと変わらぬ毎日を過ごす中、何気ない毎日にもそれぞれの日常や人生があることを静かに観させてくれる。いつも同じようで、同じではない。その違いは身近なあの人が、自分の心のバランスが、街の雰囲気がそう感じせてくれる。

ストーリーとネタバレ

大体いつも同じ時間に目が覚め、妻にキスをして仕事へ向かう。街の雰囲気から、家での会話から、心に浮かぶ詩をただただ書き留めて。
職場のドニーといつも変わらない「今日の調子はどうだ」から始まる1日。時折耳に入る乗客たちの雑談に頬を緩ませ、いつものルートを回る日々。家に帰ればおばかさんで可愛いマーヴィンとローラが迎えてくれる。
 
個性的なセンスを持ち合わせたローラはカーテンや壁を始めに家のデザインを変えてゆき、新しい料理にも果敢に挑戦する。土曜には市場でのカップケーキ販売の予定もあり、これが上手く行けばお店も始められるかも!あなたも詩をコピーしてほかの人にも見てもらいましょう!そして昔からのカントリー歌手になる夢をまた見たいからギターを買いたいの、とやりたいことを声に出し、感情をまっすぐ伝えるローラと、全てを受け止めながらも心の奥底の愛がいつも感じられる素敵な夫婦像。
 
いつも通りだと思っていた日も、気づけば少しずつ違っている。いつも明るい上司は家庭の問題を抱えているし、たまたま出会った少女は素敵な詩を書いていて、毎日運転していたバスは突然故障するし、バーで出会った元カップルは男が未練タラタラで毎日付きまとっている。
 
そして来たる土曜日、ローラのカップケーキも大盛況でお祝いに食事とデートに出掛け、最高の休日を終えた2人を待っていたのは、大事な詩のノートを破り散らかしたマーヴィンの悪戯の跡。いい日の最後にトラブルに見舞われ、ついていない日の最後に愛するひとの寝顔に癒され。そうして毎日が回ってゆくということ。それでも日々を生きてゆくことへの普遍的な愛を描いたこのストーリーが心から愛しく感じる。
 

感想とか文句とか

 
心安らぐ映画。武蔵野館で観るのは初めて。リニューアルしたとはいえ昔ながらの上映館の趣が残る館内。上映前は劇場スタッフのアナウンスで始まるそんな映画館だからこそ、パターソンの味や雰囲気をじかに感じ取らせてくれる。
大箱のハイテク技術を駆使した劇場や作品とは全く違う、しかし心にスッと入り込んで暫くはこの感覚が続くのだろうなと思わせてくれる後味の良さはなかなかない。
 
平凡な幸せってなかなか常には感じられない分、こうして映画として描くことは非常に難しいのだと思う。パターソンという1人の男性の生活を覗き見させてもらう感覚。いつもと同じ時間、同じパターンの暮らしでも、見える景色やいつも会うあの人にも同じようで違う毎日が流れている。それを全てとりただすのでなく、日常のスパイスのひとつと描き、パターソンを通して詩をもって受け入れる。
 
スマホも普及している時代に、電話は持たず、ノートとペンを片手に仕事に向かい、家族と過ごしバーで一杯飲んで帰る。そんな昔ながらとも思える生活に憧れる。
少しぐた~っとしながら、休みの夕方にでものんびりと観直したい作品でした。今日はパターソンの木曜日を観ようかな、なんてしてみたい。
 
アーハン♪不思議と心が軽くなり、クスッと笑える日常の一コマをぜひ堪能してほしい。